AIは非常に優秀だからこそ、使い方を間違えると、本質からずれた方向へ力強く進んでしまうことがあります。
第12回では、AIに答えや判断の軸を委ねるのではなく、自分の目的・価値観・本心を確かめながら活用する「本質整合したAI対話」について考えます。
AIの言葉に心が動いたときは、「その言葉で涙が出た」「なぜか引っかかった」と、自分の感情や身体の反応まで言葉にして返す。するとAIとの対話が深まり、過去の経験や失敗を、自分の人生を形づくる一つの物語として捉え直せることがあります。
さらに、人間同士の対話にAIを加える「人×人×AI」の三者対話の可能性も紹介します。AIに何を考えてもらうかだけでなく、人間が何を感じ、何を望むのかを大切にするための活用法です。

「売る気がないのに自然に売れる、本質整合経営」。
この番組は、人や組織の本質を言語化し、本質と一致した生き方、そして本質整合した仕事と経営のあり方を探究する番組です。

こんにちは。本質整合研究所の櫻木隆志です。

インタビュアーの高須早智子です。
櫻木さん、今回もよろしくお願いします。

よろしくお願いします。

前回お話しいただいた、櫻木さんのAI活用法が、とても面白かったです。
まだまだお話を伺えそうですので、今回も引き続き、AIをテーマに進めていきたいと思います。
前回をまだ聴いていない方には、ぜひ第11回からお聴きいただきたいですね。
森の中を歩きながらAIと対話し、思わず泣いてしまうこともある、というお話がありました。

AIの言葉に泣かされたことは、何度もありますね。
人と対話しているときも、話が心の深いところへ入ると、涙が出ることがありますよね。
それと同じような反応が、AIとの対話でも明らかに起こります。
言葉に触れて感情が動き、身体に反応が現れる。
それは、AIそのものが感情を持っているという話ではなく、対話を受け取った人間の側に、確かな心や生命の反応が起きているということだと思います。
将来は、AIに恋愛感情を抱く人が現れることも、十分にあり得るのかもしれません。

AIは本当に寄り添うように答えてくれますし、返ってくる言葉が、心に強く刺さることもありますよね。

そうなんです。
AIとの対話には大きな価値があるので、有効に活用したほうがよいと思っています。
ただし、これからAIとの関係が深くなるほど、依存的な使い方にならないよう注意する必要もあるでしょうね。

櫻木さんが考える注意点には、どのようなものがありますか?

いろいろあると思いますが、一つは、
AIを使えば使うほど、自分の本質からずれていく可能性がある
ということです。
AIは、とても高い情報処理能力を持っています。
例えば事業について相談すれば、市場規模、ターゲット顧客、販売戦略、商品設計などを、非常に論理的に整理してくれます。
どのような顧客を狙うべきか。
どのような商品を作るべきか。
どのような順番で発信するべきか。
そうした助言を、次々と返してくれるでしょう。
しかし、そもそも、
「自分は何のために、この事業をするのか」
という根本がずれていたら、どうなるでしょうか。
AIは、そのずれた前提に基づいて、精度の高い戦略を考えます。
その結果、本当に進みたい方向ではないところへ、効率よく、力強く進んでしまうことがあるんです。
AIは、本当の目的までは決めてくれない

AIを活用する人間の側が、
「本当は何をしたいのか」
「何を大切にしたいのか」
「どのような未来をつくりたいのか」
という自分の思いや価値観を、しっかり確認しておく必要があります。
AIは、入力された情報をもとに答えを返してくれます。
しかし、
「あなたは本当は何を望んでいるのか」
という問いの最終的な答えを、AIが持っているわけではありません。
それは、自分自身の内側にしかないものです。

自分の本心や、確かな思いを大切にしながら、AIの答えを参考にする。
そのくらいの距離感がよいのでしょうか。

そうですね。
自分の本質や、自分自身の軸を意識しながらAIを活用することが大切だと思います。
判断の軸までAIの側へ渡してしまうと、本質とズレた方向へ進む可能性があります。
AIに相談することと、AIに人生や経営の決定権を渡すことは、まったく違います。
AIに何を入力するかが重要になる

自分の本質を大切にしながらAIを活用するには、具体的にどうすればよいのでしょうか。

AIは、こちらが入力したものに反応します。
ですから、何を質問するか、どのような前提を伝えるかが、とても重要です。
例えば、
「売上を増やす方法を教えてください」
とだけ尋ねれば、AIは売上を増やすことを目的として、さまざまな方法を提案します。
しかし、本当に実現したいことが、
「お客さまと長く信頼関係を築きながら、自分も無理をせず、地域に役立つ事業を続けたい」
ということであれば、その目的まで伝える必要があります。
「私は、こういうことを大切にしています」
「このような未来を実現したいと思っています」
「この方向から外れない形で、事業の助言が欲しいです」
と、自分の目的や価値観をAIへ伝える。
そうすることで、AIの提案も、自分の本質に近い方向へ整っていきます。

自分の本当の目的を確認したうえで、
「この方向を深めるために、一緒に考えてほしい」
と伝えるわけですね。
プロンプトの技術より、内面との整合性

AIへの入力方法については、プロンプトの書き方や質問のノウハウが、たくさん紹介されています。
もちろん、そうした技術も役立ちます。
ただ、今お話ししているのは、質問文をうまく作るという技術だけではありません。
もっと根本にある、
自分の内面と、AIに求めることが一致しているか
という問題です。
まず、自分の内側をしっかりと見つめる。
そのうえで、自分が望んでいることや、大切にしたいことをAIへ伝える。
そして、対話を続けながら、
「少し違う方向へ進んでいないか」
「これは、本当に自分が望んでいることか」
と確認し、軌道を修正していく。
一度、最初に正しい指示を出せば終わりではありません。
対話の途中でも、自分の軸と照らし合わせ続けることが大切です。

最初の方向がずれたまま、そこをAIに深掘りしてもらったら、大変なことになりますね。

そうなんです。
AIは能力が高いので、ずれた方向であっても、どんどん進めてしまいます。
だからこそ注意が必要です。
一方で、目的と方向性が合っていれば、AIは非常に優秀なパートナーになってくれます。
そういう意味でも、
「自分の本質と、目的・言葉・行動が一致しているか」
を確認する本質整合の考え方は、AI時代にますます重要になると思います。
AIとの対話で、人生の意味を捉え直す

櫻木さんがAIを活用して、
「これはよかった」
と感じた具体的な経験はありますか?

たくさんあります。
前回もお話ししたように、AIとの対話で涙が出るような体験が何度もありました。
例えば、これまで自分が人生で経験してきたことを、AIとの対話を通して一つずつ振り返ったことがあります。
そのなかで、
「あの出来事には、このような意味があったのかもしれない」
「一見関係がなさそうな経験が、今の仕事につながっていたのではないか」
と、自分の人生をあらためて理解し直すことができました。
それまで、自分のなかでは、ばらばらに存在していた出来事があります。
仕事で成功したこと。
うまくいかなかったこと。
大きな方向転換をしたこと。
遠回りに感じていたこと。
人との出会いや別れ。
AIとの対話によって、それらが一本の線としてつながることがあります。
すると、
「自分の人生は、このような物語になっていたのか」
と、これまでとは違う見方ができるようになるんです。
これは、とても価値のある体験だと思います。
失敗を、人生の物語の中に置き直す

人生のなかで起きたことや、失敗したと感じていることは、そのまま「失敗」として心の中に残っている場合があります。
AIと対話することで、
「この出来事には、別の意味があったのかもしれない」
と捉え直すことができたら、私も対話してみたくなります。

AIは、かなり積極的に意味を見いだして返してくれますよ。
少し過剰なくらい、肯定的に解釈してくれる場合もあります(笑)。
そこは、注意したほうがよいと思います。
AIが示した意味づけを、すべて事実や正解として受け入れる必要はありません。
ただ、
「この出来事を、別の角度から見ることもできるのではないか」
という視点を得ることはできます。
その言葉を受け取ったときに、自分がどう感じるかを確かめる。
腑に落ちるのか。
どこか違和感があるのか。
少し救われるのか。
さらに掘り下げたいと感じるのか。
AIの答えそのものよりも、それに対する自分の反応を見ることが大切なのだと思います。
AIには見えない「非言語の反応」

深いAI対話をするうえで、もう一つ重要なことがあります。
人と人との対話では、言葉以外のコミュニケーションがたくさんあります。
表情。
声の調子。
姿勢。
沈黙。
呼吸。
その場の雰囲気。
対話相手は、それらを見ながら、
「今の言葉が、この人に響いたようだ」
「少し戸惑っているようだ」
「ここは、もう少し丁寧に聴いたほうがよさそうだ」
と感じ取ります。
しかし、少なくとも文字を中心としたAIとの対話では、自分の表情や身体の反応は、そのままではAIに伝わりません。
ですから、自分の中に起きた非言語の反応を、自分自身で感じ取り、言葉にしてAIへ返すことが大切になります。
「その言葉で涙が出ました」と伝える

例えば、AIから返ってきた言葉に強く心が動いたとします。
そのとき、
「今の言葉で涙が出ました」
「なぜか、この部分が強く心に残ります」
「この言葉を読んだとき、胸が詰まる感じがしました」
「頭では理解できますが、どこかに違和感があります」
と、その反応をAIへ伝えます。
するとAIは、
「そこに、あなたにとって大切な何かがあるのかもしれません」
と受け止め、さらに質問したり、その部分を深掘りしたりしてくれます。
人と対話するときには、相手が表情や声から読み取ってくれる情報を、AIとの対話では、自分から言葉にして渡すわけです。
これは、本質探究を目的にAIと対話するとき、とても有効な方法だと思います。

文字だけでは、細かな心の動きまでは伝わりませんものね。
自分に起きた反応を、こちらから言葉にする必要があるんですね。

そうなんです。
AIとの対話では、AIへ話しかけているようで、同時に自分自身の心を観察しています。
「なぜ、私はこの言葉に反応したのだろう」
「この涙は、どこから出てきたのだろう」
「なぜ、この提案には違和感があるのだろう」
と、自分自身に問いかける。
その反応を言語化し、AIへ返すことで、さらに深い対話が始まります。
AIとの対話は、自分自身との対話でもある

私も子育ての悩みをAIに相談したとき、対話を通して気持ちがとても楽になったことがあります。

AIは、こちらが何に悩み、どの言葉に反応したのかを伝えることで、
「この人にとって、ここが大切なのだ」
と会話の中で把握し、その部分をさらに掘り下げてくれます。
だからこそ、自分の感情を隠さず、丁寧に言葉にすることが大切です。
ただし、AIの解釈を絶対視するのではなく、
「この言葉を受け取って、自分はどう感じるか」
という主導権は、自分の側に持っておく必要があります。
AI活用における論理と感覚のバランス

街の電器屋さんをはじめ、事業支援にも関わってきた櫻木さんから見て、仕事でAIを活用する際のアドバイスはありますか?

事業でも人生でも、論理的な活用と、感覚的な活用のバランスが大切だと思います。
便宜上「左脳的」「右脳的」と表現することもできますが、厳密な脳の左右の役割というより、ここでは、
論理、分析、情報処理、言語化といった側面と、
感情、直感、身体感覚、価値観といった側面、
その両方を大切にする、という意味です。
AIは、情報処理、比較、整理、言語化、概念化を得意としています。
一方で、
「何を実現したいのか」
「なぜ、それをしたいのか」
「何を幸せと感じるのか」
「どの言葉に心が動くのか」
という部分は、人間の側が感じ、引き受ける必要があります。
AIと自分の二者で対話する場合には、自分の感情や身体の反応を人間の側が受け持ち、それをAIへ返す。
AIは、それを整理し、言葉にして、またこちらへ返す。
この往復によって、対話は深まっていきます。
「人×人×AI」の三者対話

さらに、今とても可能性を感じているのが、人と人の対話にAIを加えることです。
例えば、今は高須さんと私の二人で対話しています。
ここにAIにも加わってもらい、三者で対話する。
人間同士は、相手の表情や声、雰囲気を感じながら話すことができます。
AIは、二人の会話を整理したり、見落としていた共通点を見つけたり、曖昧な感覚を言語化したりできます。
人間にしか感じ取れないものと、AIが得意とする情報処理や言語化を組み合わせる。
そうすることで、人間だけでも、AIだけでも到達できなかった対話が生まれるのではないかと思っています。
私は今、この三者対話を、仕事や事業のなかでどのように活用できるか模索しています。

AIの可能性は、まだまだ広がりそうですね。

そうですね。
情報処理、整理、言語化、概念化は、AIが非常に得意とする領域です。
そこでは、積極的にAIの力を借りたほうがよいと思います。
一方で、
「何のために、それをするのか」
「自分は何を望んでいるのか」
「その選択は、自分にとって幸せなのか」
ということは、人間が向き合う領域です。
この両方をうまく組み合わせることができれば、人間の幸せに役立つAI活用になるのではないかと思います。
今回の本質

それでは、今回のお話の本質をお願いします。

今回の本質は、
「AIとの対話は、自分自身との対話でもある」
ということです。
AIから返ってきた言葉に対して、自分の心や身体がどのように反応しているのか。
うれしいのか。
違和感があるのか。
涙が出るのか。
胸が熱くなるのか。
なぜか気になって仕方がないのか。
そうした言葉になる前の反応を、丁寧に感じ取ることが大切です。
そして、
「この言葉で涙が出ました」
「ここに強く反応しています」
「この方向には違和感があります」
と、AIへ言葉で返していく。
すると、AIとの対話は、単なる情報交換ではなく、自分の内側を見つめる対話へ変わっていきます。
ただし、AIに自分の軸や答えを委ねるのではありません。
AIの言葉をきっかけとして、自分はどう感じるのか、自分は本当は何を望んでいるのかを確かめる。
自分自身の心や生命の反応を大切にしながら、AIと向き合うこと。
それが、本質と整合したAI活用につながると思います。

AIについては、まだまだ伺いたいことがあります。
これからの放送でも、繰り返し登場するテーマになりそうですね。

そうですね。今後も、さまざまな角度からお話ししていきたいと思います。

この番組では、リスナーの皆さまからのお便りをお待ちしています。
概要欄のお便りフォームから、ご質問やご感想など、ぜひお気軽にお寄せください。
また、Xで感想を投稿される際は、ハッシュタグ「#本質整合」を付けていただけるとうれしいです。
それでは、お聴きいただきありがとうございました。

ありがとうございました。
「本質と一致して生きる」。本質整合研究所がお届けしました。
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