同じ家電製品なら、家電量販店やネット通販のほうが安い。それでも街の電器屋さんから買い続けるお客さまがいるのは、なぜなのでしょうか。
第2回では、約10年にわたる街の電器屋さんの研究から見えてきた、WHAT・HOW・WHO・WHYという4つの価値を解説します。
商品そのものだけでなく、提供の仕方、人柄、信頼関係、そして「何のために仕事をしているのか」という思いまでが価値になる。4つの価値が重なると、価格や条件だけで比較されず、「この人から買いたい」「この店を応援したい」と思ってもらえるようになります。
価格競争から抜け出したい方、売り込まずに選ばれる商売や、ファン・リピーターが生まれる経営を考えたい方におすすめです。

こんにちは。本質整合研究所の櫻木隆志です。

インタビュアーの高須早智子です。さあ櫻木さん、今回2回目の配信ということになりましたが、初回の放送はいかがでしたか?

自分としては、かなり反省点の多い初回でしたね。
私自身、気になるPodcast番組を見つけると、まず第1回を聴くことが多いんです。ですから、「初回はとても大事だ」と思い、事前にいろいろ考えていたのですが、実際に収録してみると、なかなか思うようにはいきませんでした。

そんなことはありませんよ。
櫻木さんがどのような方なのか、子どもの頃のお話も含めて知ることのできる内容でした。まだ聴いていない方には、ぜひ第1回から遡って聴いていただきたいと思います。
それでは、第2回もよろしくお願いします。今回は、どのようなテーマでお話しいただけますか?

前回も少しお話ししましたが、このPodcastを始めるきっかけの一つに、私がここ10年ほど続けてきた、町の電器屋さんの商売の研究があります。
今回は、町の電器屋さんの商売を研究するなかで見えてきたことを、皆さんと共有したいと思います。
なぜ、町の電器屋さんを研究したのか

私の住んでいる地域にも、町の電器屋さんがあります。
そのお店は、手作りのチラシをポストに入れてくれるのですが、ちょっとしたミニ新聞のようになっていて、私も楽しみに読んでいます。
チラシを通して人柄が伝わってきて、「きっと、よい方がお店をされているんだろうな」と感じるんです。
櫻木さんも、町の電器屋さんの温かさや、人間味のあるところに惹かれたのでしょうか?

そうですね。
前回お話ししたように、私は以前、インターネットの世界で仕事をしていました。そのなかで虚無感を抱くようになった反動もあったと思います。
街の電器屋さんでは、売る人と買う人が、お互いのことをよく知っています。信頼関係があり、冗談を言い合いながら、自然に商品が売れていく。
私は、その光景そのものに魅力を感じました。
「どうして、このような関係が成り立っているのだろう」
そう思い、街の電器屋さんの経営者に話を聞いて回ったことが、研究の始まりでした。

確かに気になりますね。
インターネット通販なら、人と会うことなく商品が届きます。一方、町の電器屋さんの車が住宅の前に止まっているのを見かけることがあります。
きっと、お客さまの家を訪問しながら、深い信頼関係を築いているのでしょうね。
実際には、どのような価値をお客さまに提供しているのでしょうか?
なぜ街の電器屋さんはつぶれないのか?

最初に、電器店の経営者の皆さんに、次のような質問をしました。
「近くに大型家電量販店があり、インターネットでも商品を買える時代に、なぜお客さまは、このお店を選び続けるのですか?」
すると、多くの方から返ってきた最初の答えは、
「サービスがよいから」
「技術力があるから」
というものでした。
もちろん、それも大きな理由だと思います。ただ、その答えだけでは、少し納得できない部分もありました。
町の電器屋さんと、量販店やインターネット通販とでは、商品によっては数万円も価格が違う場合があります。
多少サービスがよく、技術力が高いとしても、それだけで数万円の価格差を超えて選ばれるのだろうか。
私はそう感じ、さらに詳しく話を聞いていきました。

それは、街で街の電器屋さんがあるなと思って、飛び込みで入ってってお話聞いたんですか?

当時は、電器店に商品を卸す営業の仕事をしていたんです。
商品を販売する営業マンとして訪問しているのに、経営のことを根掘り葉掘り聞くものですから、「どうして、そんなことまで聞くのだろう」と思われていたかもしれませんね。
それでも、いろいろなお店を回りながら、商売や経営について詳しく聞かせてもらいました。

サービスや技術力が重要なのは分かります。
ただ、数万円単位で価格が違う商品を購入するときに、なぜ量販店やインターネットではなく、町の電器屋さんを選ぶのか。
確かに、そこには別の理由がありそうですね。
「電器屋さん」を超えた、暮らしの相談相手

もう一つ大切なのは、現在の町の電器屋さんは、家電製品を販売するだけではないということです。
多くのお店が、暮らしに関わる幅広い仕事をしています。
例えば、
「水道が詰まった」
「トイレの調子が悪い」
「キッチンやお風呂をリフォームしたい」
といった相談にも対応します。
お店によっては、家全体のリフォームや、外壁、屋根の工事まで行っています。
そうなると、もはや単純に「電器屋さん」とは言えません。
「自分たちは何屋なのか」
というところから、あらためて定義し直す必要があるのではないか。私は、お店を回りながら、そのような話もしていました。

家のなかで何か困ったことが起きたら、
「あの電器屋さんに相談してみよう」
と思ってもらえる存在なんですね。

そうなんです。
何か困りごとが起きたとき、多くの場合はインターネットで業者を検索します。以前であれば、電話帳で探していたかもしれません。
ところが、初めて会う業者に依頼する場合、自分の家のことや、家族構成、暮らし方、家電の使い方などを、一から説明しなければなりません。
それだけでも手間がかかりますし、
「ここまで話してもよいのだろうか」
「この人は、本当に信頼できるのだろうか」
という不安もあります。
人間関係をゼロから築きながら、自分の要望を伝えていくのは、意外と大変です。
一方、町の電器屋さんとは、すでに信頼関係があります。
お店の方が、お客さまの家族構成や暮らし方、趣味まで知っていることもあります。
そのため、
「この商品なら、こちらのほうが合っていますよ」
「ここに置くなら、この方法が使いやすいですね」
と、その人の暮らしに合わせた提案ができます。
お客さまが「これが欲しい」と言っても、専門家として、
「それより、こちらのほうが合っていますよ」
と、別の商品を勧めることもできます。
すでにお互いのことを分かっているため、コミュニケーションも楽ですし、何より大きな安心感があります。

特に高齢の方だけで暮らしている世帯では、何かを相談するときに、知らない業者よりも、
「いつも来てくれている、あの人にお願いしたい」
と思いますよね。
街の電器屋さんが提供している4つの価値

街の電器屋さんがお客さまに提供している価値を整理すると、4つの要素があることが分かってきました。
一つ目は、WHATの価値です。
これは、商品やサービスそのものの価値です。例えば、テレビや冷蔵庫、エアコンなどの商品や、電気工事などのサービスといった、提供する商品・サービスそのものの部分です。
二つ目は、HOWの価値です。
どのように商品やサービスを提供するのかという価値です。
親切に対応する。
分かりやすく説明する。
お客さまの状況に寄り添う。
設置後もしっかりサポートする。
街の電器屋さんは、このHOWの部分に大きな強みを持っています。
そして三つ目が、WHOの価値です。
つまり、「誰から買うか」という価値です。
先ほど高須さんがお話しされた手作りの新聞もそうですが、日頃から情報を届け、コミュニケーションを重ねることで、お互いの人柄や暮らしが分かるようになります。
そうすると、お客さまはお店の方に親しみを感じ、やがて、
「この人が好きだから頼みたい」
「この人から買いたい」
と思うようになります。
商品を買うことだけでなく、その人に頼むこと自体に意味が生まれるんです。
ここまでで、
- WHAT=何を提供するか
- HOW=どのように提供するか
- WHO=誰から買うか
という3つの価値があります。
ただ、研究をさらに深めていくと、その奥に、もう一段深い価値があることに気づきました。
それが、WHYの価値です。
WHYが価値になる

WHYとは、
「何のために、この商売をしているのか」
「このお店は、何のために存在しているのか」
ということです。
経営理念やミッション、ビジョンという言葉で表されることもあります。
こうしたものは、大企業が掲げるもので、小さなお店にはあまり関係がないと思われがちです。
「理念を掲げても、売上には直接つながらない」
と考える方も多いと思います。
ところが、実際には、このWHYがとても重要です。
しかも、経営者自身のためだけではなく、お客さまにとっての価値にもなります。
どのような思いで仕事をしているのか。
何のために、この商売を続けているのか。
それを言葉にして発信し、お客さまに共感してもらえると、関係性が変わっていきます。
お客さまのなかに、
「この人を応援したい」
「このお店には、これからも続いてほしい」
という気持ちが生まれるんです。
そうなると、お客さまは単純な損得だけでは動かなくなります。
価格や条件を比較したうえで最も安いところから買うのではなく、
「多少価格が違っても、この人から買いたい」
と思うようになります。
WHAT・HOW・WHOに加えて、WHYの価値まで伝わったとき、価格や条件だけで比較される世界から抜け出すことができます。

その人への信頼によって、お客さまも満たされますし、販売する側も、お客さまに喜んでもらうことで満たされます。
単なる売買を超えた何かが生まれている感じがしますね。

そうですね。最近の言葉で言えば、街の電器屋さんは、お客さまにとっての「推し」のような存在になっているのかもしれません。

なるほど、「私の推し」ですね。これはでも、電器屋さん以外にも応用できますね。

もちろんです。
お客さまにとっての「推し」のような存在になれれば、何か必要なことが起きたときに、真っ先に思い出してもらえます。
そして、
「まず、この人に相談してみよう」
と思ってもらえるようになります。
これは、あらゆる仕事や商売に通じることだと思います。

さらに具体的な事例についても聞いていきたいところですが、それは次回以降のお楽しみにしたいと思います。
それでは、今回のお話の本質をお願いします。

今回の本質は、
「WHAT・HOW・WHO・WHYという4つの価値が重なると、売り込まなくても自然に選ばれるようになる」
ということです。
商品そのものだけではなく、
どのように提供するのか。
誰が提供するのか。
何のために提供するのか。
そこまでが価値として伝わることで、お客さまとの関係は大きく変わります。

WHAT・HOW・WHO・WHYの4つの価値ですね。
これからの放送では、それぞれの価値について、具体的な事例も交えながら伺っていきたいと思います。

これからの放送では、それぞれの価値について、具体的な事例も交えながら伺っていきたいと思います。

この番組では、リスナーの皆さまからのお便りをお待ちしています。
概要欄のお便りフォームから、ご質問やご感想など、ぜひお気軽にお寄せください。
また、Xで感想を投稿される際は、ハッシュタグ「#本質整合」を付けていただけるとうれしいです。
それでは、今回もお聴きいただきありがとうございました。

ありがとうございました。
「本質と一致して生きる」。本質整合研究所がお届けしました。
【収録後記】
初めての収録で2話分を収録し、今回は2回目の放送回でした。1回の収録(放送)でどれくらいのボリュームが話せるのか、まだ感覚がわからず、反省点が山ほど…。
反省して次回の収録に臨みたいと思います。
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