前回、前々回は、番組初のゲストとして静岡県焼津市の「サカモト電器」坂本さんにお越しいただきました。
街の電器屋さんでありながら、家電だけではなく暮らしのさまざまな相談に応え、認知症サポーター講座など、商売とは直接結びつかない地域活動にも取り組む坂本さん。
では、サカモト電器が変わった理由は、こうした新しい取り組みを始めたからなのでしょうか。
ブランディングがうまくいったから?
「暮らしのコンシェルジュ」という商売の形をつくったから?
地域貢献を始めたから?
核心はそこではありません。
一番大きかったのは、坂本さん自身が、
「自分は何のためにこの仕事をしているのか」
という、仕事の根っこにある思いをあらためて発見したことでした。
もともと坂本さんの中には、「地域のために役に立ちたい」という思いがありました。
自治会、消防団、PTAなど、仕事とは別のところでは以前からさまざまな地域活動をしていました。
一方で、商売は「商品を売ってお金を稼ぐもの」、地域貢献は「ボランティア」と、二つは別々のものとして捉えていた。
そこがつながったとき、仕事の意味そのものが変わっていったのではないか。
今回は、坂本さんの事例を振り返りながら、
「自分の本質は、どうすれば見つけられるのか?」
についても探求します。
気づけば何度もやっていること。
頼まれていないのに、ついやってしまうこと。
これまでの人生で「魂が喜ぶような感覚」があった経験。
もしかすると、本質はどこか遠くに探しに行くものではなく、すでに自分が生きてきた中に表れているのかもしれません。
今回の探求テーマは、
「振り返ったら、すでにそう生きていた。いつもそう生きてきた。気づけば何度も戻ってくる自分は、どんな自分でしょうか?」
ぜひ、ご自身のこれまでを振り返りながらお聴きください。

「売る気がないのに自然に売れる、本質整合経営」。
この番組は、人や組織の本質を言語化し、本質と一致した生き方、そして本質整合した仕事と経営のあり方を探究する番組です。

こんにちは。本質整合研究所の櫻木隆志です。

インタビュアーの高須早智子です。
櫻木さん、今回もよろしくお願いします。

よろしくお願いします。
初めてのゲスト回を振り返る

前回、前々回と、番組初のゲストにお越しいただきました。
静岡県焼津市でサカモト電器を営む坂本さん、通称“さかもっちゃん”をゲストにお迎えしてお話をお聞きしました。聴かれていない方は、ぜひ前の2回も聴いていただきたいですね。

そうですね。
番組として初めて3人で対談する形だったので、技術的にも、
「ちゃんと会話として成立するかな」
という心配もありましたし、内容的にも、どうなるんだろうと思っていました。
でも、全体としては、とてもいい感じにできたと思っています。
ただ、収録が終わってからあらためて聴いてみると、
「一番伝えたかった核心まで、まだ十分に届いていなかったな」
という感覚が残ったんです。
なので今回は、坂本さんのお話を材料にしながら、もう少し深く解説してみたいと思います。
「地域貢献をしたから成功した」ではない

さかもっちゃんのお話を初めて聴いた方は、
「街の電器屋さんだけど、家のことを何でもやるようになったからうまくいった」
とか、
「ブランディングを変えたからうまくいった」
あるいは、
「地域貢献のイベントを始めたから、お客さんが増えた」
というふうに受け取る可能性もありそうですね。

そうなんです。
もちろん、実際にそういう変化は起きています。
「暮らしのコンシェルジュ」として、家の困りごとを幅広く相談してもらえるようになった。
お店の誕生会をやった。
お店のトリセツを作った。
認知症サポーター講座のような、商売と直接関係のないイベントも始めた。
表面から見れば、
「活動内容が変わった」
ということは、すごく分かりやすい。
でも、私はそこが本質ではないと思っています。
それらは、あくまで外側に現れた結果なんです。
一番の転換点は「何のために仕事をしているか」に気づいたこと

一番大きかったのは何か。
私は、
坂本さん自身が、自分は何のためにこの仕事をしているのか、その根っこにある思いをあらためて発見したこと
だと思っています。
そこから全部が変わり始めた。
坂本さん自身が、
「自分は本当は、こういうことを大切にしていたんだ」
と気づいた。
そこが、一番のターニングポイントだったと思うんです。

前回のお話では、そこに「地域貢献」という言葉が出てきましたよね。
地域貢献は、もともと坂本さんの中にあった

そうですね。
坂本さんは、もともと地域のためにいろいろな活動をしていました。
PTAの役員。地域の壮年会。消防団。自治会の役員…など。
誰かに無理やりやらされていたわけではないと思うんです。
坂本さん自身が、
「地域のために」と思って、積極的に関わっていた。
「地域のために役に立ちたい」
という思い自体は、もともとあったんです。
でも「地域貢献」と「仕事」は別々だった

それなのに、ご本人の中では、それが仕事とは結びついていなかった。

そうなんです。
坂本さんの中では、
仕事は仕事。
地域貢献は地域貢献。
と完全に分かれていた。
仕事は、いい商品を売って、お金を稼ぐもの。
地域貢献は、ボランティアとして地域のためにやるもの。
別々の箱に入っていたんですね。
でも、よく考えてみると、
「地域の役に立ちたい」
という思いは、地域活動の時だけに存在しているわけではありません。
本当は、電器屋の仕事にもつながっていた。
そこが一つになったことが、とても大きかったと思います。
先代から受け継いでいたものもあった

さらに遡ると、坂本さんのお父さん、先代も、地域貢献ということをとても大事にされていたそうなんです。
だから坂本さん自身も、意識していたかどうかは別として、そうした姿勢を受け継いでいた部分もあると思います。
ずっとそこにあった。
でも、
「これが自分の商売の根っこなんだ」
とは認識していなかった。
言葉になっていなかったんです。

そう考えると、
「自分の中にあるのに、自分で気づいていない」
という人って、かなり多そうですね。
本質は、新しく作るものではない

多いと思います。
本質って、
「これからどんな自分になろうか」
と考えて作るものというより、
振り返ってみたら、すでにそう生きていた
というものだと思うんです。
「気づいたら、またここに戻ってきている」
みたいなものです。
本人にとっては自然すぎるから、逆に気づきにくい。
自分では当たり前すぎて、見えない

例えば私自身で言えば、何かあると、
「そもそも、これは何なんだろう」
と考えたくなります。
どんどん深く掘っていく。
それを言葉にして、概念として整理して、人に伝える。
振り返ってみると、私は昔から、ずっとそういうことをやっています。
だから今「本質探究」と言っていることも、突然始めたわけではないんです。
昔からやっていたことに、後から言葉がついた。
一方で、その自分の性質から離れて、
「とにかくお金を稼ぐために、これをやろう」
ということだけをしていると、だんだん自分の中にモヤモヤが溜まってくる。
そういう経験も何度もありました。
おそらく坂本さんも、商売のやり方と自分自身の根っこがずれていた時期には、似たようなモヤモヤがあったんじゃないかと思います。
お客さんの方が、坂本さんの本質を知っていた?

面白いのは、お客さんの方は、坂本さんのそういう部分を、ある程度分かっていたんじゃないかと思うんです。
坂本さんが、
「困った人を放っておけない」
「地域のために何かしたい」
という人だと分かっていた。
だから、坂本さんを好きだったし、困った時に相談していた。
でも坂本さん自身は、仕事の時には、
「仕事は仕事だから」
と、その部分をあまり前面に出していなかった。
つまり、
お客さんが感じていた坂本さんらしさと、坂本さん自身がやっていた商売の形が少しずれていた
のかもしれません。
本質を見つけるには、何を振り返ればいいのか

でも、みんなが櫻木さんに会えるわけではありません(笑)。
自分自身で、
「自分の本質って何なんだろう」
と考える時に、何かヒントになる質問はありますか?

いくつかあります。
例えば、
「気づけば、何度も戻ってきている自分はどんな自分か」
という問いです。
いろんな仕事をしてきた。
いろんな場所にいた。
違うことをしているように見える。
でも振り返ると、
「結局いつも、こういうことをやっているな」
というものがあるかもしれません。
「魂が喜んだ経験」は何だったか

もう一つは、
「これまでの人生で、ものすごく自分が喜んだ経験は何だったか」
です。
少し大げさに言えば、
「魂が喜んでいるような感覚」
があった瞬間ですね。
結果が出たとか、評価されたとか、お金をもらったとかだけではなく、
「これをやっている時、自分は本当に生きている感じがした」
という経験。
そこには、かなりヒントがあると思います。
頼まれてもいないのに、やってしまうこと

それから、
「頼まれてもいないのに、なぜかやってしまうことは何か」
というのも面白い問いです。
仕事でもない。
誰かに言われたわけでもない。
お金になるわけでもない。
なのに、ついやってしまう。
それって、その人にとって、とても自然な行為なんですよね。
そういうところに、その人らしさが表れていることがあります。
本質は、日常の中にすでに現れている

そう考えると、本質って、どこか遠くへ探しに行くものではないんですね。

そうなんです。
むしろ、すでに生きている。
ただ、本人にとっては自然すぎて、気づいていない。
だから一度、立ち止まって振り返る必要がある。
普段の環境から、少し離れてみる

そうですね。
オンラインでも対話はできますし、実際にそういう形で本質探究をすることもあります。
ただ、より深く考えるのであれば、普段の環境から少し離れるのは有効だと思います。
いつもの職場で、いつものパソコンに向かって、
「さて、自分の本質を考えよう」
と思っても、すぐに仕事のメールが来たり、電話が鳴ったりしますからね。
場所を変えてみる。
研修会場でもいい。
できれば自然の中に行ってみる。
普段の環境とのつながりをいったん切って、自分の人生を少し俯瞰して見る。
そうすると、普段とは違うものが見えてくることがあります。
さかもっちゃんの魂が喜んだ瞬間

「魂が喜んだ経験」という話で言うと、前回、坂本ちゃんが話していた場面を思い出します。
40周年のイベントで、お客さんから感謝のメッセージをもらった。
それを読んで、
「電器屋をやってきてよかった」
と思った。
あの時のお話って、まさにさかもっちゃんの中の何かが大きく動いた瞬間だったんじゃないでしょうか。

そうだと思います。
だから、あの出来事が大きかったんですよね。
売上が上がったから、ではない。
商品が売れたから、でもない。
お客さんから、
「あなたがいてくれてよかった」
ということを感じた。
それが、坂本さん自身の根っこにあるものとつながった。
だから、あれほど心が動いたんだと思います。
高須さんの場合は?

高須さんも以前、この番組で少し探りましたよね。
その時には、
「地域」
「子ども」
という言葉が出てきました。
気づけば、そういうことに関わっている。
そういう場にいる時、充実している。
そんな感じがありましたよね。

そうですね。
もちろん首都圏でいただく仕事も、とてもありがたいです。
でも去年、地元の小学校で授業をした時が、本当に楽しかったんです。
あの時間を思い出すと、
「こういうところに、自分の本質につながるものがあるのかな」
と、櫻木さんと話していて気づきました。

そうですよね。
だから、本質って、
「これから何者になろう」
と考える前に、
「自分は、これまで何者として生きてきたんだろう」
と振り返った方が見つかりやすいのかもしれません。
振り返ったら、すでにそう生きていた

いろいろな人の話を聞いていると、
「それ、もうずっとやっていますよね」
ということがよくあります。
本人は気づいていない。
でも、人生を振り返ると、何度も同じ場所へ戻ってきている。
同じようなことに心を動かされている。
同じような人を助けようとしている。
同じような役割を自然に引き受けている。
そこに、
「自分は何者なのか」
を知る大きなヒントがあると思います。
今回の探究テーマ

それでは、今回のお話の探求テーマをお願いします。

今回は、
「振り返ったら、すでにそう生きていた」
ということを、一つのテーマにしたいと思います。
皆さんにも、こんなふうに問いかけてみてください。
「いつも、そう生きてきた自分は、どんな自分でしょうか?」
そして、
「気づけば何度も戻ってくる自分は、どんな自分でしょうか?」
仕事だけではなくてもいいと思います。
子どもの頃から好きだったこと。
何度も夢中になったこと。
つい人のためにやってしまうこと。
強く心が動いた出来事。
なぜか繰り返してきた選択。
それらを少し振り返ってみてください。
もしかするとそこに、すでに皆さんの本質は現れているかもしれません。

この番組では、ホームページで「読むPodcast」も公開しています。
単なる文字起こしではなく、放送での対話をもとに、さらに読みやすく、考えを深められる形に再編集しています。
こちらも、ぜひご覧ください。
また、この番組は、答えを一方的にお伝えする番組ではありません。
リスナーの皆さまと一緒に問いへ向き合い、本質を探究していく番組です。
今回の探究テーマ、
「振り返ったら、すでにそう生きていた。いつもそう生きてきた、気づけば何度も戻ってくる自分は、どんな自分ですか?」
についても、ぜひお便りフォームからお聞かせください。
皆さまの問いや気づきが、次回以降の探究につながるかもしれません。
それでは、今回もお聴きいただきありがとうございました。

ありがとうございました。
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