P022_地域貢献が「自然に売れる」につながった話

前回に続き、静岡県焼津市のサカモト電器・坂本さん、通称“さかもっちゃん”をゲストに迎えます。
40周年の「売らない感謝祭」をきっかけに、坂本さんは店の「トリセツ」を制作。そこであらためて見えてきたのが、自分の商売の根っこにある「地域貢献」という思いでした。
それまで、PTAや地域活動、消防団などの地域貢献と、電器店の仕事は別のものだと思っていた坂本さん。しかし、その二つをつなげていくことで、認知症サポーター講座など、家電販売とは直接関係のない活動が始まります。
すると、お客さんとの距離が縮まり、「困ったら坂本ちゃんに相談しよう」という関係が生まれ、市役所などから紹介される仕事も増えていきました。
売るために地域貢献をするのではなく、地域の役に立とうとした結果、仕事が自然に返ってくる。
今回の探究テーマは、「自分のWHYや本質と仕事が一致すると、商売はどう変わるのでしょうか。売ることと、人や社会の役に立つことは一つになれるのでしょうか?」です。

「売る気がないのに自然に売れる、本質整合経営」。

この番組は、人や組織の本質を言語化し、本質と一致した生き方、そして本質整合した仕事と経営のあり方を探究する番組です。

こんにちは。本質整合研究所の櫻木隆志です。

インタビュアーの高須早智子です。

櫻木さん、今回もよろしくお願いします。

よろしくお願いします。

今回は22回目の配信です。前回に引き続き、静岡県焼津市で町の電器屋さんを営む、サカモト電器の坂本さんにお越しいただいています。

さかもっちゃん、今回もよろしくお願いします。

はい、サカモト電器のさかもっちゃんです。
よろしくお願いします。

前回は40周年の「売らないイベント」まで

前回は、サカモト電器さんが40周年を迎えた時に、これまでの「感謝祭という名の売り出し」をやめて、本当にお客さんへ感謝するだけのイベントをやってみた、というお話まで伺いました。

あそこが大きな転機だったんですよね。

そうですね。40周年を「お店の誕生会」という売らないイベントとしてやってみて、坂本さん自身の商売の見え方が変わったと思います。

今回は、その後の話をしていきたいと思います。

最初に取り組んだのが、お店のトリセツづくりでした。

「お店のトリセツ」をつくる

坂本さん、サカモト電器のトリセツを作った時のことを少し話してもらえますか。

はい。

40周年を終えたあと、櫻木さんから、

「お店のトリセツを作りましょう」

と提案してもらいました。

もちろん、そんなものを作るのは初めてでした。

お店に貼っていたお客さんからの一言やメッセージ、それから僕自身の思いも入れて、一冊にまとめました。

本のような形にして、お客さんに配ったんですか?

そうです。それを渡すことで、

「サカモト電器って、こういう店なんだ」
「さかもっちゃんって、こういうことを考えている人なんだ」

ということを、知ってもらえたと思います。

他のお客さんがどんなふうに感じているのかも伝わりますし、

「自分も同じ気持ちだよ」

と共感してくれる方もいました。

今でも、そのトリセツを家に取っておいてくださるお客さんがいるんですよ。

トリセツに、お母さんの想いも載せた

それから、僕だけではなくて、当時店番をしてくれていた母のことも載せました。

先代とともに店をやってきた母の思いや人柄も載せたんです。

すると、それに共感してくださるお客さんも多くて。

それまで以上に、

「この店を応援したい」

と思ってくださる方が増えたように感じました。

単なるサービス案内ではなくて、

「この店には、こういう人たちがいて、こんな想いでやっている」

ということが伝わる冊子だったんですね。

実は、街の電器屋さんは「家のことなら何でも相談できる」

櫻木さんは、トリセツを作る時に、何を一番伝えたいと思ったんでしょうか。

まず感じていたのは、

「お客さんは、街の電器屋さんが実際に何をしてくれる人なのかを、意外と知らない」

ということでした。

街の電器屋さんって、家電を売るだけではないんです。

水回りも相談できる。ドアの調子が悪いとか、窓がおかしいとか、屋根や外壁の相談まで、家の困りごとなら、かなり幅広く相談できる。

坂本さん自身が全部やるわけではなくても、信頼できる大工さんや水道屋さんにつないでくれる。

だからまず、

「電器屋さんだけど、実は家のことなら何でも相談できる人なんですよ」

ということを伝えたいと思いました。

「何ができるか」だけでは、想いが伝わらない

ただ、それだけだと、

「家電が売れなくなったから、最近はリフォームまでやっているんだね」

と思われるかもしれません。

それも違うんですよね。大事なのは、

「なぜ、そこまでやっているのか」

ということです。

なぜ家電だけではなく、家の困りごとまで引き受けるのか。

なぜそこまで、お客さんに関わるのか。

その理由を掘っていくと、坂本さんの商売の根っこにある思いが見えてきました。

商売の根っこにあった「地域貢献」の想い

さかもっちゃん自身も、トリセツをつくる中で、整理された部分はありましたか?

ありましたね。トリセツを作っていく中で、自分自身も、

「自分はどういう商売をしたいのか」

を改めて考えることができました。

僕の中ではっきりしたのが、

地域貢献

ということでした。

先代からずっとこの地域で電器屋を続けてこられたのは、本当に地域の方々のおかげです。

だから自分も、

「地域の役に立ちたい」

という思いが、ずっとあったんだと思います。

お客さんの困りごとが、家電以外にも広がっていった

幸い、僕の周りには大工さんや水道屋さんなど、いろいろな仲間がいます。

家一軒建てられるくらい、いろいろな業者さんとつながっています。

だから、お客さんが何か困っている時に、

「それなら、この人にお願いできますよ」

とつなぐことができる。

そうしているうちに、家電以外の相談も自然に増えていきました。

でも、お客さんにとって一番ありがたいのは、

「さかもっちゃんなら安心して相談できる」

ということなんですよね。

まさに、人対人の商売ですね。

もともと地域貢献はしていた…。でも仕事とは別だった

そうなんです。そして、ここがすごく大事なんです。

坂本さんは、もともと地域のためにいろいろなことをやっていたんですよ。

PTAの役員をやったり、壮年会でも役をやったり、消防団にも参加したり。

ずっと地域貢献をしていた。

でも当時は、

「地域活動」と「電器屋の仕事」は別のもの

だと思っていたんですよね。

完全に別だと思っていました。

地域のことは地域のこと。

仕事は仕事。

そういう感覚でした。

でも、実は根っこは同じだった。

「地域の役に立ちたい」

という思いは、地域活動にも、電器屋の仕事にも共通していたんです。

そこを一つにつないだ。

私は、そこがサカモト電器さんにとって、とても大きな転換だったと思います。

本質と仕事が一致すると、自然になる

そうですね。

自分でも、それが一致していると分かってから、すごく自然になった感じがあります。

お客さんからも、以前よりいろいろなことを相談されるようになりました。

「さかもっちゃんに聞けば何とかなる」

という感じで、頼ってもらえることが増えた。

関係も、より深くなっていきましたね。

最初の地域貢献イベント「認知症サポーター講座」

実際に、地域貢献としてどんなイベントをやるようになったんですか?

最初にやったのが、

認知症サポーター講座

でした。

きっかけは、一人暮らしのお客さんです。

その方から、洗濯機の操作について、何度も同じ質問をされるようになったんです。

電話をいただいたり、訪問したり。

そして、こちらが作業をすると、

「これで足りるかしら」

と、毎回1万円を出されるようなこともありました。

だんだん、

「少し、お金の感覚も変わってきているのかな」

と感じるようになったんです。

目の前のお客さんの困りごとからイベントが生まれた

そこで地域の議員さんに相談しました。

すると、

「焼津市で認知症サポーター講座をやっているから、受けてみたら」

と教えてもらったんです。

最初は、自分が勉強しようと思ったんですけど、

「どうせなら、自分だけじゃなくて、お客さんも一緒に学んだらいいんじゃないか」

と思って。

お店は狭いんですが、10人ちょっとくらい集まってもらって、みんなで学ぶことにしました。

一見すると、電器屋さんとは全く関係のない講座ですよね。

そうなんです。

でも、実際にやってみると、

「こういうことは知っておきたい」

と思っている方が、意外と多いことが分かりました。

僕自身も知らなかったですしね。

売るために企画したイベントではなかった

ここは、かなり重要なところだと思います。

認知症サポーター講座を、

「集客のためにやりましょう」

と企画したわけではないんです。

目の前のお客さんが困っていた。

坂本さん自身も、

「自分も勉強しないといけない」

と思った。

だったら、

「みんなで一緒に学ぼう」

となった。

つまり、

地域の人との関係の中から、自然に活動が生まれている

んですよね。

結果として、それが地域貢献にもなっている。

さかもっちゃんの雰囲気も変わっていった

櫻木さんは、さかもっちゃんが少しずつ自分の本質と仕事を一致させていく姿を、ずっと見てきたわけですよね。

どう感じていましたか?

まず、坂本さん自身の雰囲気が変わっていった感じがありました。

そして同時に、お客さんから見たサカモト電器さんも、どんどん変わっていったんだと思います。

トリセツを作った頃から、お客さんからも、

「坂本さん」ではなく、

「さかもっちゃん」

と親しみを込めて呼ばれるようになって、

坂本さん自身が本当に思っている、

「地域のために役に立ちたい」

という気持ちと、実際の商売がつながった。

そこから、活動全体が自然になっていったように感じました。

商売と関係ないことをやって、仕事になるのか?

認知症サポーター講座のように、家電販売とは直接関係のないことをやっていると、

「それが商売につながるの?」

と思う人もいるかもしれません。

実際、お客さんとの関係や仕事には、どんな変化がありましたか?

お客さんとの距離は、すごく縮まりましたね。

何でも言い合えるような関係になっていったと思います。

そして、一見すると商売と関係のないことをやっていても、回り回って自分のところへ返ってくるんです。

例えば、市役所の方が、

「家電のことで困っている人がいる」

という時に、僕を紹介してくれるようになりました。

施設の利用者さんで、家電のことで困っている方がいると、声をかけてもらえることも増えました。

地域で活動していることが知られるようになると、

「さかもっちゃんに頼めば安心」

と思ってもらえるようになる。

その結果として、仕事にもつながっていったんです。

それで、いくら売上になるの?

ただ、今でも言われますよ。

同業者の方から、

「そんなことやって、いくら売上になるの?」

って(笑)。

やっぱり言われるんですね。

言われます。

でも、僕はもう、

「この道が自分に合っている」

と思っています。

直接すぐ売上になるかどうかだけでは見ていないんです。

地域の皆さんに必要とされることをやる。

そうしていると、結果的に仕事として返ってくることもある。

今は、それでいいと思っています。

売る気がなくなったら、自然に売れるようになった

まさに、この番組タイトルの、

「売る気がないのに自然に売れる」

につながっていきますね。

本当にそうなんです。

最初に出会った頃の坂本さんは、

「何とか売らなきゃ」

と思っていた。

売る気は、すごくあったんです。

でも、なかなか売れない。

むしろ、お客さんとの距離が少しずつ開いていった。

ところが、

「売らなきゃ」

から離れて、

「地域の役に立とう」
「目の前のお客さんの困りごとを何とかしよう」

という方向へ進んだら、結果として仕事が自然につながるようになった。

まさに、

売る気がなくなったら、自然に売れるようになった

という変化を、私は10年以上見てきたんです。

「売ること」と「貢献すること」は別なのか

普通は、

「商売は商売」
「社会貢献は社会貢献」

と分けて考えます。

でも、坂本さんの事例を見ると、本当にそうなのかなと思うんです。

人や社会の役に立つことと、商売をすること。

本来は、別々のものではないのかもしれません。

誰かの困りごとを解決する。

喜んでもらう。

信頼してもらう。

そして、

「またこの人にお願いしたい」

と思ってもらう。

その結果として、お金が循環する。

それも、商売の一つのあり方だと思います。

40周年から50周年へ

さかもっちゃん、40周年から10年経って、今度は50周年ですよね。

この10年間を振り返って、どんなことを感じていますか?

40周年から10年たって、今度50周年を迎えます。

この10年で感じるのは、世の中が情報社会になればなるほど、

「誰かに頼りたい」

という人が増えているということです。

情報はたくさんあります。

でも、

「じゃあ、自分の場合はどうすればいいの?」

となると、分からない。

そんな時に、

「さかもっちゃんに聞けばいい」

と思ってもらえることの価値が、むしろ大きくなっている感じがします。

自分がこの10年やってきたことが、今の時代にますます必要になってきている。

そんな実感があります。

昭和の電器屋さんでAIを体験してもらう

そして今度の50周年では、ちょっと面白いことをやろうと思っています。

うちは昔ながらの“昭和の電器屋さん”みたいなお店ですけど(笑)、そこでお客さんにAIを体験してもらおうと思っています。

「AIって何?」
「どうやって使うの?」

というところから、実際に体験してもらう講座です。

今から、とても楽しみにしています。

昔ながらの町の電器屋さんでAI講座。面白いですね。

でも、坂本さんがやると不思議とつながっているんですよね。

何かを売るためではない。

地域のお客さんが、

「これからの時代についていけるかな」

と不安にならないように、一緒に体験する。

それもやっぱり、

「地域の役に立ちたい」

という思いの延長なんだと思います。

今週の探求テーマ

それでは、今回のお話の探求テーマをお願いします。

櫻木
櫻木

今回は、坂本さんの事例をもとに、二つの問いを考えていただきたいと思います。

一つ目は、

「自分のWHYや本質と仕事が一致すると、商売はどう変わるのでしょうか?」

そしてもう一つは、

「売ることと、人や社会の役に立つことは、一つになれるのでしょうか?」

という問いです。

仕事とは、売上をつくることなのか。

社会の役に立つことなのか。

もしかすると、その二つを分けて考える必要はないのかもしれません。

自分が本当に大切にしたいことと、仕事がつながった時に何が起こるのか。

坂本さんの事例をきっかけに、皆さん自身の仕事についても考えてみていただければと思います。

この番組では、ホームページで「読むPodcast」も公開しています。

単なる文字起こしではなく、放送での対話をもとに、さらに読みやすく、考えを深められる形に再編集しています。

こちらも、ぜひご覧ください。

また、この番組は、答えを一方的にお伝えする番組ではありません。

リスナーの皆さまと一緒に問いへ向き合い、本質を探究していく番組です。

今回の探究テーマ、

「自分のWHYや本質と仕事が一致すると、商売はどう変わるのでしょうか?」

についても、ぜひお便りフォームからお聞かせください。

皆さまの問いや気づきが、次回以降の探究につながるかもしれません。

それでは、今回もお聴きいただきありがとうございました。

櫻木
櫻木

ありがとうございました。

そして坂本さん、2回にわたって本当にありがとうございました。

まだまだお話ししたいことがたくさんありますので、またぜひ登場していただければと思います。

はい、よろしくお願いします。
どうもありがとうございました。

さかもっちゃん、ありがとうございました。

櫻木
櫻木

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