番組21回目にして、初めてのゲストをお迎えしました。
静岡県焼津市で「町の電器屋さん」を営むサカモト電器の坂本さん、通称“坂本ちゃん”です。
家電が売れていた時代から、量販店やインターネット販売が広がる時代へ。メーカーの施策に沿って売り出しや訪問販売を続けるなかで、次第にお客さんとの距離が開いていく感覚があったといいます。
転機になったのは、40周年イベントでした。
「感謝祭という名の売り出し」ではなく、もう売るのをやめて、本当にお客さんへ感謝するだけのイベントをしてみませんか。
最初は怖さもあったという坂本さん。しかし、そこでお客さんから寄せられた感謝の言葉を目にし、「電器屋をやってきてよかった」と心から感じたことが、大きな転換点になりました。
今回の探究テーマは、「あなたは何のために今の仕事をしていますか。その答えは、これまでの人生の中にすでに現れていませんか?」です。

「売る気がないのに自然に売れる、本質整合経営」。
この番組は、人や組織の本質を言語化し、本質と一致した生き方、そして本質整合した仕事と経営のあり方を探究する番組です。

こんにちは。本質整合研究所の櫻木隆志です。

インタビュアーの高須早智子です。
櫻木さん、今回もよろしくお願いします。

よろしくお願いします。

今回で21回目ですね。
あっという間に20回を超えました。

そうですね。
番組タイトルとは一見あまり関係なさそうな、かなりディープな話もしてきましたけど(笑)、それでも聴いてくださっている方が結構いらっしゃるようで、本当にありがたいですね。

うれしいですよね。
そして今回は、21回目にして初めての試みがあるんですよね。
番組初のゲストをお迎えします

はい。
ここまでいろいろなテーマを探究してきましたが、今回は少し原点に戻って、この番組のタイトルそのものでもある、
「売る気がないのに自然に売れる、本質整合経営」
というものを、実際の事例から感じていただきたいと思っています。
そこで今回は、初めてゲストの方に来ていただきました。
静岡県焼津市で町の電器屋さんを営んでいる、サカモト電器の坂本さんです。
地域では“坂本ちゃん”と呼ばれて、親しまれている方です。
私にとっては、「売る気がないのに自然に売れる」ということを研究し始めた頃、最初に一緒にいろいろ試してくださった方でもあります。
もう10年以上のお付き合いになります。
今日は、坂本さんご自身から、その変化の過程を聞いていきたいと思います。

坂本さん、よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
静岡県焼津市で電器屋を営んでいます、サカモト電器の坂本です。
皆さんから“坂本ちゃん”と呼ばれていますので、今日もそう呼んでいただければと思います。

では、私もさかもっちゃんと呼ばせていただきますね。
私も静岡県出身なので、焼津は馴染みのある土地なんですが、さかもっちゃんとこうしてお話しするのは初めてですね。

そうですね。ちょっと緊張しております(笑)。

坂本さん、高須さんがAIじゃないことは、もう分かっていただけましたか?

以前、私がAIだと思われたという回がありましたが、さかもっちゃんも、私のことをAIだと思っていたんですよね。
ちゃんと人間でございます。(笑)
焼津の「街の電器屋さん」サカモト電器

ではあらためて、サカモト電器さんは、焼津ではどんなお店なんでしょうか。

いわゆる大型量販店とは違って、個人経営の町の電器屋さんです。
僕が生まれて2年後くらいに、先代である父が店を始めました。今は僕が二代目としてやっています。

生まれた時から、ほぼ電器屋さんと一緒に育ってきたんですね。

そうですね。高校を卒業してから4年ほど修業に出て、そのあと店に戻りました。父とは10年ほど一緒に仕事をしました。
その頃までは景気もよくて、家電製品がポンポン売れていくような時代だったんです。
「売り出せば売れる時代」が終わっていった

でも、だんだん状況が変わっていきました。どこの家庭にも家電製品が普及して、「新製品が出たら売れる」「売り出しをしたら売れる」ということはなくなっていきました。
そこにきて大型量販店も増えてきて、さらにインターネット販売も広がって、家電を買える場所や手段も増えてきました。
それでも僕らは、それまでと同じように、メーカーから、
「今月はこれを売ってください」
「このキャンペーンをやってください」
という施策が来ると、それに合わせて動いていました。
結局のところ、
「お客さんに商品を売り込む」
ということばかりやっていたんですよね。
「感謝祭」という名の「売り出し」

定期的に「感謝祭」というイベントもやっていました。
でも実際は、「これがいくら」「あれがいくら」「今ならキャンペーンでお得」みたいな、要するに売り出しイベントです。
その待状をお客さんの家へとどけて、「ぜひ来てください」と声をかける。
でも、だんだん、
「買うものがないから、今回は行けないよ」
と言われるようになりました。
こちらとしては、
「粗品も用意しているので、ぜひ来てください」
という気持ちなんですが、お客さんからすると、
「何も買わないのに、もらいにだけ行くのも悪いよ」
となってしまいます。次第に、店に来てくださるお客様が減っていき、お客さんとの距離が開いているということが、目に見えて分かるようになっていったんです。
お客さんと会うのが苦しくなった

その頃、さかもっちゃんはどんなお気持ちだったんですか?

しんどかったですね。
招待状を持っていっても、
「また嫌な顔をされたら嫌だな」
と思うようになりました。こちらも気持ちよくないんですよね。
「これをずっと続けていくのは大変だな」
と思っていた時期でした。

その頃、櫻木さんと出会ったわけですね。

そうなんです。最初は商品の仕入れ先として出会ったんですけどね。
街の電器屋の本質とズレていませんか?

櫻木さんから見た、当時のサカモト電器さんは、どんな印象だったんでしょうか。

私が街の電器屋さんに興味を持った一番の理由は、商品そのものよりも、お客さんとの関係性だったんです。
街の電器屋さんって、お客さんとの関係がものすごく深いんですよね。
長年のお付き合いがあって、お互いに信頼している。
困ったことがあれば、「あの人に相談しよう」と思ってもらえて、相談される。相談を受けたら、そのお客様にとって一番いい方法を考えて、それを実現してあげる。だからこそお客さんから絶対的に信頼されている。
私はそれを見て、
「これこそ、本来の商売の姿なんじゃないか」
と思ったんです。
ところが、実際にやっていることは、
「どうしたらもっと売れるか」
「どうやってお客さんに商品を買ってもらうか」
という売り込みが中心だった。
私には、お客さんから支持されている理由と、実際にお店がやっていることが、少しずれている
ように見えたんですね。
お客さんから選ばれている理由と、店がやっていることがズレていた

お客さんが街の電器屋さんを利用している理由は、商品が安いからではありません。
長く地域にいてくれる。
困ったら来てくれる。
何でも相談できる。
安心して任せられる。
そういう関係性があるから支持されている。なのに、お店側は、新商品が出るたびに、
「今度はこれを買いませんか」と売りに行く。
感謝祭を開いても、実際には売り出しをしている。
そこに、少しずれを感じたんです。
そこで坂本さんにも、
「お客さんから愛されている理由と、実際にやっていることが、少しずれていませんか?」
という話をしていました。
「売るため」ではない商品を持っていくと、会話が変わった

そこから、少しずつ変化が始まったんですね。

そうですね。櫻木さんのところで扱っていた、家電以外の生活に役立つ商品のパンフレットを、お客さんのところへ持っていったら、楽しみにしてくれるんです。
家電を売りに行っていた時とは違って、お客さんとの会話も自然に増えていきました。
自分が本当に「いい」と思ったものをすすめる

今でも印象に残っているのが、布団用の掃除機です。
当時ちょっと話題になっていて、まず僕自身が欲しかったんですよね。
それで買って、自分で使ってみたんです。
そうしたら、本当に良かった。
だから、
「これ、すごくいいですよ」
と、お客さんにおすすめしました。
すると、お客さんも使ってみて、
「知ってはいたけど、こんなにいいものだったんだ」
と、すごく喜んでくれたんです。
その時のお客さんの顔は、今でも忘れられません。

それまでの、
「これを売らなければいけない」
というおすすめとは、全然違いますね。

そうですね。自分が使ってみて、本当にいいと思った。
だから、
「これは教えてあげたい」
という感じでした。
40周年で初挑戦した「売らないイベント」

そこから、櫻木さんはさらに具体的な提案をされたんですよね。

そうです。坂本さんはそれまで、
「お客さんのところへ行ったら、何か売らなければいけない」
「イベントを開いたら、何か買ってもらわなければいけない」
という商売を続けていました。
そこで、
「一度、それをやめてみませんか」
と提案しました。
ちょうどその頃、サカモト電器さんが40周年を迎えるタイミングだったんです。
通常なら、40周年記念の大売り出しをするところですよね。
そこで私は、
「売るのをやめませんか」
と言いました。
感謝祭という名前の売り出しイベントではなく、
本当にお客さんへ感謝するだけのイベントをしてみませんか
と提案したんです。
「売らない」イベントなんて、正直怖かった

さかもっちゃん的には、それまでの常識とはかなり違う提案ですよね。
その時はどう思われましたか?。

正直、怖かったです(笑)。
すごく斬新な考えでした。
今までずっと、
「イベントをやる=売る」
でやってきましたから。
それを変えるというのは、ものすごく勇気が要りました。
でも、
「ここで何かが変わるチャンスかもしれない」
と思ったんです。
それで櫻木さんを信じて、やってみることにしました。
「売るイベント」ではなく、本当の感謝祭へ

実際にやってみて、どうでしたか?

最初は、お客さんからも、
「なんか変わったイベントだね」と言われました(笑)。
でも、そのイベントで、お客さんから僕へのメッセージを書いていただいたんです。
それを店内に貼ったんです。
お客さんがサカモト電器に対して抱いていた思い

そのメッセージを読んだ時ですね。本当に感動しました。
普段、お客さんが自分のことをどう思っているかなんて、なかなか聞くことはないじゃないですか。でも文章にしてもらうと、
「自分のことを、こんなふうに思ってくれていたんだ」
というのが、ものすごく伝わってきたんです。
本当に心に染みました。
そして、
「電器屋をやってきてよかったな」
と思いました。
あれが、自分の中では一番響いた出来事でしたね。
「売らない」ことで、商売の意味が見えてきた

櫻木さんも、さかもっちゃんの変化を見て嬉しかったでしょうね。

うれしかったですね。ただ、「売らないイベントをやりましょう」と最初に言った時の坂本さんの顔は、今でもよく覚えています(笑)。
「そんなことして大丈夫なの?」
という不安が思いっきり顔に出ていましたから。

出てましたね(笑)

でも、40周年のイベントを終えたあたりから、坂本さん自身の商売に対する見方が、かなり変わったように見えました。
お客さんからの言葉を通して、
「自分は、何を売ってきたのか」
「お客さんは、自分の何を支持してくれていたのか」
ということが見えてきたんだと思います。
それまでは、自分の仕事は「家電を売ること」だと思っていた。
でも、本当にお客さんが価値を感じていたのは、それだけではなかった。
お客さんが買っていたのは「商品」だけではなかった

困った時に来てくれる。
何でも相談できる。
長く付き合える。
安心して任せられる。
そういう関係そのものを、お客さんは価値として感じていたんですね。
40周年のイベントは、坂本さん自身が、そのことに気づく大きなきっかけになったと思います。そして、その次のステップとして、
「お店のトリセツを作りましょう」
ということになりました。
「サカモト電器は何者なのか」を言葉にする

40周年で、お客さんからどう見られているのかが見えてきたので、次に、
「サカモト電器とは、どんな店なのか」
「坂本さんは、何のためにこの仕事をしているのか」
を、自分たちの言葉で整理してみましょうとお伝えしました。
そして取り組んだのが、「お店のトリセツ」づくりでした。
私から見ると、
40周年のイベントと、その後のトリセツづくり
この2つが、サカモト電器さんにとって大きなターニングポイントだったと思います。

その続きは、ぜひ次回じっくり伺いたいですね。
さかもっちゃんには、次回も引き続きご出演いただきたいと思います。
今週の探求テーマ

それでは、今回のお話の探求テーマをお願いします。

今回は、坂本さんの事例を聞いていただきました。
そこで、皆さんにも考えていただきたい問いがあります。
「あなたは、何のために今の仕事をしていますか?」
そしてもう一つ、
「その答えは、これまでの人生の中に、すでに現れていませんか?」
という問いです。
仕事の肩書きや、扱っている商品だけではなく、
これまで、どんな時にうれしかったのか。
どんな時にお客さんから喜ばれたのか。
どんな時に自然に力が湧いたのか。
逆に、どんな仕事の仕方に違和感があったのか。
そこを振り返っていくと、
「自分は、本当は何のためにこの仕事をしているのか」
というヒントが、すでに人生の中に現れているかもしれません。
ぜひ、少し振り返ってみていただければと思います。

この番組では、ホームページで「読むPodcast」も公開しています。
単なる文字起こしではなく、放送での対話をもとに、さらに読みやすく、考えを深められる形に再編集しています。
こちらも、ぜひご覧ください。
また、この番組は、答えを一方的にお伝えする番組ではありません。
リスナーの皆さまと一緒に問いへ向き合い、本質を探究していく番組です。
今回の探究テーマ、
「あなたは何のために今の仕事をしていますか?」
そして、
「その答えは、これまでの人生の中にすでに現れていませんか?」
についても、ぜひお便りフォームからお聞かせください。
皆さまの問いや気づきが、次回以降の探究につながるかもしれません。
それでは、今回もお聴きいただきありがとうございました。

ありがとうございました。
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